Main Contents
2006年03月06日
いわゆる「審判問題」を巡る多面的考察 その1
フットボール定食第一回の討論の議題として、審判問題を取り上げた。
サッカーの現場に最も深く関わりながらも
その問題点や技術論に関してはほとんど伝えられることのない審判という世界について
実際(リアル)に集合しての座談会の開催。
その内容を主旨を変えない程度に再構成したものです。
テープ起こし:寺下
---
江藤――今回のテーマは審判問題です。すでに報道されているように、レフリングの基準が改正され運用されることになりました。*1これによってどう試合の流れが変わるかについて、話を進めたいと思います。そこでまず「なぜ審判問題が起きてきた」ということについて意見を聞かせてもらえればと思っています。
まず1つに言えるのは、「ルールに厳格に吹いていた」こと。日本人的真面目さというか、一理ある部分なのですけど、でも、それで試合の流れがぶつ切りになってしまっていたこと。笛を吹くことで逆の方向になって、荒れてくるということがありましたよね。
浅野――人間がやるスポーツですからね。
江藤――ところが、ヨーロッパに関していうと?
浅野――ゲームを演出するということとがいいか、悪いかとは別の話だとは思いますが、ある程度(審判は)選手とコミュニケーションしながらやってきた側面はあると思いますね。そもそも審判問題は何が問題かというと、「ルールに厳格に吹くべきか」、あるいは「周りの状況を考えてある程度ゲームを演出するべきか」に絞られると思うんですよね。
「どっちが正しいかどうか」というのは微妙な問題だと思うのですが、結局ルールに厳格に吹いた結果、選手や観客に不快感を与えることになるのなら、ある程度状況に応じて笛を吹くことも必要かな、と個人的には思っているのですか、みなさんはどう思いますか?
江藤――そもそも「審判問題」ってどうして起こったと思います?
後藤――まず、ファンとかサポーターからの視点から言うと、自分たちに不利な笛には文句を言うわけですが(笑)、そうじゃない所に問題があったから、この問題が起こっているわけですよね。
で、どっちのファンが見ても「それはないだろう」というミスジャッジもあったし、それと同時に「試合の進行が下手」ということもあって、さらに不快感が増幅されたのではないかと。
江藤――要するに「技術論」と「ルール論」が重なってしまった。
後藤――そうですね。
江藤――佐藤さんはどう思います?
佐藤――そうですね。ちょっと待って…。
一同――(笑)
寺下――ホント偶然の話なのですが、この前高校サッカーの会場で、某Jのスカウトと審判問題の話になったんですよ。ちょうどその試合では退場劇などもあったので。
そこで選手側から一番困ることを聞いたのですが、「試合の中で笛が一定しないこと」だと言うのですね。1つの基準があれば、言い方は悪いですが下手な笛でもその基準で選手は合わせられるけど、「試合の中で急に笛が厳しくなると選手は戸惑う」そういう話をそのスカウトの方はしていましたね。
江藤――審判がプロじゃなかったということもあるのですかね?
後藤――そうですね。いわゆる「イコライジング、つじつまあわせ」ってあるじゃないですか。ミスジャッジで退場させた穴埋めに、1人少なくなったほうが不利にならないように、11人残っているほうの反則を厳しくとる。また、本当だったらさっきイエローを出して、次にイエローを出して併せてレッドの退場で「仕方がないか」と思うところを、さっきイエロー出さずにレッド出しちゃって「なんでいきなり出すのか」とかいうこともありますよね。
実は伏線はあるのだけれども、イエローを出していないばかりに納得できないとか。
江藤―-さっきの話の中で、イエローを出すタイミングの問題もありますよね。「ここでイエローは出さないでしょ」という意味で。
浅野――例えば0-2で負けている側が10人になっているような試合の時、そこで10人の方がレッドかイエローか微妙なプレーをした場合、ヨーロッパならイエローで留める事が多いと思うんですよ。ちょっとレッドっぽくても。
でも、日本ではルールに厳格にレッドを出す。それがいいことか僕にはわからないですが、1人少ないところでリードされている場面で、2人少なくなったら試合にならないじゃないですか。それは見ているお客さんに関してもそうですし、個人的にも疑問に思います。
佐藤――僕はみんなが思うほど審判問題を重要に考えていないんですよ。それはそれで日本の審判のあり方だと思いますし。一定しないのも日本の審判。その一定しないことを正していかなくてはならない問題はあるけれども、「審判が悪い」と決め付けるのはよくないんじゃないかと。
昨年のACLの時(横浜FM―山東)のジャッジなんて、あり得ない判定があったわけですよ。それと比べるのはどうかと思うけど、一番いけないのは「今年は流す方向で」とか、「今年は厳しい方向で」と基準をコロコロ変えるんじゃなくて、審判によって「この人は厳しくやる人だ、流す人だ」と個性が出ていればいいのではないかと。
後藤――そこの試合に臨む選手は審判のジャッジを観察して、それに応じたプレーをすべきだと。
佐藤――そうです。
寺下――そこで、さっきの話なんですが、そのスカウトに「何分でジャッジを見るんですか?」と聞いたら「最初の20分で見る」と。だから、そこから審判の基準が変わると、「全部試合が崩れてしまう」という話はしていましたね。
江藤――まず、佐藤さんの言ったことはそうだと思いますよ。審判で基準は変わるはずですから。イエローカードの枚数も集計が出せますよね。「この人は平均何枚出す」というような端的なデータもありますからね。
ただ、それを除いても今までは判定の基準が僕はきつかった気がするんですよ。「真面目に笛を吹き過ぎる」というか。さっきも出たようにルールに厳格に、ちょっと触ってコロッと転んだだけでもピッと笛を吹かれる。じゃあ、「それでいいのか?」と言ったらどうなんだろうかと。
大分にビチュヘ(DF・オランダ国籍。2004年在籍)って選手がいたんですが、彼は本当にカードに悩んだ選手で、「こんなのはオランダではあたり前なんだ」と言うんだけれど、日本に来てやっちゃうとファウルどころかイエローまで貰っちゃうと。彼は悩んで適合できなくて帰ったのですが、ヨーロッパから来た選手は日本のレベルの厳しさという部分は言っていると思いますね。
佐藤――横浜FCにも昔ルディ(DF・2003年在籍)というアルバニア代表の選手がいたんですけど、それで泣いたということがありましたね。彼はスピードがないこともあって、まず体をぶつけて相手を止めていた。ところが、今の日本のサッカーって「弱いもの勝ち」になっているじゃないですか。
寺下――倒れたもの勝ち
佐藤――そう、倒れたもの勝ち。だから選手だけじゃなくて、審判ももっと海外に出て、トップじゃなくても3部でも4部でもいいから、笛を吹きに行ったらどうだろう、って思いますね。スペジャルレフリーとかが団体さんで行って、ヨーロッパの何部かで吹かせてもらって、「これがあたり前なんだ」と体感する。練習試合でもいいですし、とにかく行った方がいいと思います。
江藤――確かにそれはそうですよね。昨年もW杯予選でありましたもんね。だれだっけ。
一同――(笑)吉田さん!
寺下――本人が認めているんですから、大丈夫です(笑)
江藤――ここ一番でテンパっちゃう人はいますからね。笛を肌で感じて、ブーイングを受けて、やっていくことも必要だと思いますね。
佐藤――日本の中でやっちゃうと「日本基準」になっちゃいますから。サッカーってそういうものではないですから、審判も外に出ていくことが大事。
江藤――そうですね。でも、よく言われているのはモットラムさん(前・JFA審判チーフインストラクター)の悪影響というのかな、彼がルールに厳格かどうかは分からないのですが、Jのレフリングが彼の基準だという話を聞いたことはあります。彼は昨年帰国したんですが、そこから(レフリングが)変わってきているんですよ。去年のシーズン中から流す方向になってきた。前半戦に色々と誤審とか問題があったんですよね。ぼくもHPで書いたんですが、「笛吹きすぎだ、倒れすぎだ」と。世の中からもそういう声はあったみたいで、現実には変わってきているんですよね。
浅野――ある程度リーグ基準はそろえた方がいいとは思いますね。審判同士の勉強会も当然しているでしょうし。「右向いて右、左向いて左」になってしまうところはある程度しょうがないと思いますよ。
そもそも「ルールに厳格に吹くのか」それとも「ある程度流すのか」という部分での統一が必要なのかな、と。
江藤――ルールに厳格に吹いていたのかどうかは実際の所わからないですけど、状況証拠を集めると「モットラム基準」だったという話ですよね。それは「厳格な、選手に優しく、ハードタックラーには厳しい」という部分では統一はされていたと思うんですよね。
ただ、それでは世界で勝てない、サッカーもつまらない、試合もブツ切りになってしまう。そういうことで方向転換したのかな、とは思いますね。
後藤――「世界で勝てない」という事で、ジャッジが変化したとして、それが試合にどのような影響をもたらすかに関して話していきたいんですけど…。
ご存知だと思いますけど、今年神戸へFC東京から期限付き移籍した近藤祐介(FW・4年目)っていますよね。彼は日本人にしては異常にフィジカルが強すぎるわけなんですよ。ちょっと触っただけで相手が吹っ飛んでしまう。通常のフィジカルコンタクトの範囲と思っても、ファウルを取れられてしまったり。ひどい場合にはカードを取られてしまう。そうすると、セーブしないと日本国内ではプレーできなくなってしまうわけなんですよね。
(2004年に)FC東京がスペイン遠征に行った時に、現地のディポルテイボ・ラ・コニルーニャのBチームとやった時には彼は普通にやれたわけなんです。聞いたら「僕は普段、前田和也くんとやっているから、あんなフィジカルは屁でもない」と言っていました。ヨーロッパの基準で戦うんだったら、それは正しい感覚なのかな、と。
むしろそっちの強い方に合わせて、「弱いもの勝ち」の形を少し変えて、ただ全て「強いもの勝ち」にしろとは言わないですけど、ある程度強い人にも優しくして欲しいというのはありますよね。
その2へつづく。
TrackBacks
トラックバックURL:
Post a comment
(フットボール定食 では不適切なコメントを防止するため、コメントを掲載する前に管理者がコメントの内容を確認しています。コメントを初めて投稿する場合すぐに掲載されませんが、管理者が適切なコメントと判断した場合コメントは直ちに表示されますので、再度コメントを投稿する必要はありません。)