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2006年03月06日

いわゆる「審判問題」を巡る多面的考察 その3

浅野――まあ、これは全然想像の話なんですが、セリエAでトッティがバックチャージで骨折したときに問題になったじゃないですが。カカのコメントを持ってきて「セリエAはバックジャージを取らないから危ない」といったような。
 たぶんモットラムさんはヨーロッパとかのファウルに甘い現状を見ていて、ひょっとしたら問題意識を持っていたところもあったのかもしれませんね。
江藤――なるほどね。マイナスの方向で悪かったことを正そうと。一概に悪い方向だけじゃなく、バックチャージを正そうとしたのは「日本のため」という部分もあったと。
後藤――そもそもね、昔ペレがW杯(1962年チリ大会)で大けがしてしまった、あの悲劇から始まっているわけで…ヨーロッパではファウルを取らなすぎた、危険な行為に甘すぎた。日本は逆に少々のファウルでも取りすぎた。ちょうどいいバランスというのは誰も見つけられないと思うのですが、ベストの状態に Jリーグが近づくといいですね。
浅野――日本はもう少し流す方向にシフトすればいいですよね。逆にセリエAはもう少し厳しく取った方がいいと思います。
寺下――ただ、1つ危惧することがあって…W杯の前に必ずレフリーの審判基準が出るじゃないですか。
 例えば、フランス大会(1998年)の前に「バックチャージを厳しく取る」というのがあって、その結果どんなところでも厳しく取って、やたらカードの多い大会だったという記憶がありました。
 でも、それはFIFAの決定ですからね。そのようなことがあるので、ひょっとしたらW杯後に審判の基準がガラッと変わっている可能性はありますよね。
江藤――ただ、全体としては流す方向になるので、それは期待したいですね。
寺下――そうですね。

江藤――と、そんなところで議論も出尽くしたんですかね。佐藤さん、いかがですか?
佐藤――横浜FCは常にカードで苦しんできたチームで、先入観があって…モットラムさんがかなりよく来るスタジアムだったんですよ。

(ここではソースは提示できないが、モットラムさんがスタジアムを訪れると、審判はいつもよりも気合いを入れて笛を吹くという話があったとかなかったとか…。・江藤)

一同――(笑)
佐藤――ホント色々あったんですよ。開始1分でGKが退場するとかあったし…。
浅野――ちょっと聞いていいですか?今までは判定が厳しい基準で統一されていた。ところが、今度は流す方向で統一されるわけですよね。
 今までの話は「判断基準が違う」という審判の単純な技術的ミスの問題だと思うのですが、それ以外にも試合展開を無視したレフリングも観客や選手をいらだたせていた要因の1つだったと思うんですね。その辺に関してはどう思いますか?
 これってすごく難しい問題で、審判の役割の中には「試合を演出する」ということは入っていないですし、これをどうするのか。
江藤――つまり、明らかにファウルで、イエローを出さざるを得ない。しかし、出してしまうとイエロー2枚で退場になって試合は終わってしまう。その時に日本の審判がどうできるか?というとことですよね。
 それは…できないと思う。それはね、日本人の民族性ですよ。「ルールに厳格にやる」というのは。審判なんか特にそうじゃないですか。「一番遊びが許されないポジション」とみんなが思っているはずなんですよね。「俺達がやらなくてはいけない」って。
浅野――「あいまいにしてはだめだ」という。
江藤――だから、「流す」方向にいったとしても、「試合をコントロールする」というところまではいけない気がしますね。
浅野――コントロールすることがいいことか、悪いことかも微妙な問題ですよね。
佐藤――審判に分かってほしいのは、まず選手に「2枚のイエローを出すから退場」ではなくて、「ピッチから出さなくてはいけないから退場」ということですよね。2枚簡単なイエローもらっても、本当は退場にすべきではないと僕は思っているので。
 だから、2枚目を出す時の本質を見抜いてほしいかなと。それは今年は流す方向だからということで変わるとは思いませんし、審判だけでなくサッカーが熟成していけばそうなると思うし。
寺下――だから、それは審判だけの問題ではないですよね。
佐藤――そうそう。
寺下――僕は昨年の鹿島―浦和戦の時に(浦和・闘莉王の退場を始め、多くのイエローが乱れ飛び、場内が騒然となった)コラムを書いたんですね。選手もそうだし、審判もそうだし、観衆もそうですが「ゲームを作る、その試合を作る」という意識を持たないと。結局そのバランスが崩れてしまうと、試合も壊れてしまう。
後藤――「ゲームを作る、作らない」というのには2つの要素があると思うんですよ。
 1つは「プロ興行」としての判断で、「ここは観客の不満を爆発させてしまうから、試合を壊してはいけない」という判断と、もう1つは今寺下さんがおっしゃったように「競技なんだから、プロかアマかは関係なくいいゲームを作っていかなきゃいけない」。両方ありますよね。
 「プロとして」という部分では浅野さんがおっしゃったように難しくなってくるんですが、佐藤さんがおっしゃったように、選手も人間だから、(カードは)どうしても出さなくていけないときに出すのであって、自動的に出すものではないですよね。
 最初に試合を壊すようなファウルがあった時にはしっかり注意をして、どうしてもだったらイエローを出すとか、もう1枚イエローを出すようなときにも、敢えて注意に留めて、「次絶対やるなよ」と言って試合を元に戻すとか。
 そういった試合のコントロールが必要だと思うんですよね。
江藤――「対話」の部分。
佐藤・寺下――そうそう。
浅野――最初のルールを作るところで、選手と審判の対話があってもいいですよね。
 それとピッチ上でも後藤さんがおっしゃったようにイエローを出す前に「次やったら出すよ」と言ってから出すだけでも、審判と選手の信頼感は違ってくると思いますし。
寺下――ちょっと外れてしまいますけど、レフリーって教師が多いじゃないですか。だから、どうしても「トップダウン」になってしまうんでしょうね。
後藤――学校の先生だから「生徒諸君、私の言うことを聞きなさい」になっちゃうのでしょうね。
佐藤――ただ、今までは教師しかレフリーはできなかったわけですよ。待遇的に。ただ、これからは変わってくるんじゃないですか?選手をやってきた人がSR のようなレフリーの道に行く人が多くなってくると思う。主観を持ちつつしっかり客観でやれる人が増えてくることで、サッカーが熟成してくると思う。
後藤――次はレフリーを強化するということですね。
佐藤――そうですね。


その4へつづく。

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