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2007年12月07日

土壇場のアウェイゴールの意味

■動いた京都、動かざる広島

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 夕闇迫る西京極は、季節のバイアスとの相乗効果もあってか、しっとりとしたたたずまいを見せていた。当事者にとって死活問題とも言える一戦を控えているはずなのに、スタジアムは信じられないほどに落ち着いていた。

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 紅葉した木々が美しく景色を彩るスタジアムの外周を歩くと、全力疾走する陸上選手と何度となくすれ違う。そしてそのたびに、西京極というスタジアムが、サッカーの時間軸では生きていない人々の日常生活と肉薄しているという事実を痛感した。喜びと熱狂と悲しみと嘆きを繰り返す公式戦という非日常空間の輪を広げ切れていない京都というクラブの「難しさ」を感じた。

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 漠然とした不安は、非日常空間であるべきスタジアム内でも感じていた。空席が目立つ試合開始2時間前のスタジアムはもの悲しく見えた。京都はライバルの仙台を追い落としてこの舞台にたどり着いていたはずだった。もちろん、シーズン中に失速したことで、入れ替え戦に回ったという事実はあったが、それにしてもこの入れ替え戦はJ1のチームに真っ向勝負を挑むハレの舞台であるはずだった。ところが、もの悲しさが伝わるスタンドからは、過去に入れ替え戦で経験してきた高揚感が生まれる気配がなかった。

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 ただ、少なくとも集客面での懸念は杞憂に終わる。純粋に平日開催だった事が出足の遅さを理由付けていたのだろう。キックオフ時間が迫るにつれ、みるみるバックスタンドは埋まっていった。試合開始時には、両ゴール裏も含めて空席はほぼ姿を消していた。力強く選手たちを鼓舞する歌声も聞こえてきていた。ただ、陸上トラックが隔てたスタンドからは、熱気はピッチには伝わり切れていなかった。日本海から押し寄せてくる冷気はスタジアムに容赦なく君臨していた。

 試合開始直後。広島は戦うべき姿を明確にしていた。今までのスタイルでやるんだ、とう意思を強烈にアピール。最終節を前に入れ替え戦を覚悟できていた強みもあったのだろう。ここまで作り上げてきた自分たちのスタイルを貫徹するんだ、という立ち上がりに見えた。

 好対照に、京都の立ち上がりの布陣は定まっていなかった。最終ラインに右サイドの渡邉大剛が吸収されているような時間帯が続いていた。見ようによっては4バックに見えるそのフォーメーションは、右の中盤に大きなスペースを作り出していた。もちろん石井俊也がスライドする形でケアはするのだが、それだけであのスペースを許容した加藤久監督の采配を説明するのは単純に過ぎるだろう。おそらくは広島に左サイドにボールを集めさせる意図があったのだろうと推測する。なぜならば広島の右サイドには、現役の日本代表選手が控えていたからである。

 策を練ってきた、と思われる京都は、自らが仕掛けようとした策に順応しきれなかった。立ち上がりに佐藤寿人がクリアミスの裏を付いてGKと1対1になった3分の場面を筆頭に、京都はばたつく。この試合の行方を分けたポイントの一つは、この立ち上がりの時間帯にあったと言えるだろう。広島にとっては悔やまれる時間帯であり、京都にしてみれば命拾いができた序盤戦だった。

 試合が落ち着いたこともあったのか、それとも時間で区切っていたのか。徐々に試合に慣れてきた京都は、渡邉の基本的なポジションを上がり目の位置に固定し、3-4-3もしくは3-5-2の形へとシフト。広島とは真っ向勝負する形になるとこれが奏功して、京都に躍動感が出てくる。それがゴールの形で結実したのが、28分の事だった。

 大きなサイドチェンジのボールを受けた渡邉がクロスを入れる。受ける側にとっては難しいボールではあったが、GK下田崇はキャッチすることも、大きくパンチングすることもできなかった。後ろにこぼれたボールは田原豊の正面へ。このボールを田原がうまくヘディングして、京都が大きな先制点を奪った。

 俄然勢いづいた京都は、続く39分にCKからの流れで再び渡邉がクロス。ファーサイドで待ちかまえていた田原は、マーカーの頭上から易々と2点目のゴールを頭で流し込んだ。


■広島の誤算


 広島にとっての誤算は、期待して先発させた何人かの選手が、その期待に応えきれなかった点であろう。そしてさらに不可解だったのが、ペトロヴィッチ監督が自らの采配の失敗を正確に把握し、交代によって立ち直らせた事だろう。

 ハーフタイムに田原とミスマッチを起こしていた森崎和幸を盛田剛平と交代したのを皮切りに、トップパフォーマンスを発揮できずにいた服部公太を64分にリ・ハンジェと。そして決定的だったのが、3枚目のカードだった。

 後半。広島は前線と最終ラインとの距離が離れ、ほとんど形を作れずに崩れかけていた。それを劇的に変えたのが、緩慢なプレスで2点目のきっかけを作ったウェズレイに代えて70分に投入した平繁龍一への交代采配だった。

 みるみる動きの良くなる広島。シンプルにボールを受けて起点をつくる2トップ。確かにウェズレイの得点力は広島にとっては魅力的ではある。ただ、サッカーは個人競技ではない事を、平繁投入前後の広島がはっきりと示してくれた。

 2点のリードを持って第2戦に行きたい京都にとって痛恨の1点となったのが、88分のゴールだった。平繁からのパスを受けた佐藤が、GKとの1対1を迎える。よくコースを狙った鋭い弾道は、平井直人が一旦ははじき返すが、このボールに平繁がよく詰めていた。

 土壇場でのこのアウェイゴールは、広島のホームでの「義務」を3点から1点へと軽減させるものとなった。そして京都が持っていたアドバンテージは、この1ゴールでほとんど無に帰したと考えていいだろう。入れ替え戦第一戦は、予定調和的でもあった2ゴールと、意地と不確定要素によって決まった1ゴールで俄然おもしろみを増した。過去、先勝したチームが圧倒的に有利な結果を残してきた入れ替え戦だが、果たして今季の結末はどのようなものになるのだろうか。

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