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2008年01月23日
プロであるまえに、人間やから傷つくねん
偶然だったと記憶しているが、2006年のちばぎんカップを取材した。千葉だったか、柏だったか。それともその両方だったか、のサポーターにシーズンを占ってもらうというような依頼をもらったんじゃないかと思っているが、あまりよく覚えてない。
スタジアムの入り口付近からコンコースまで動いて話を聞いて、写真を撮らせてもらって体裁を整えて、大方依頼された素材ができた事もあって、改めてフクアリをじっくりと見て回ることにした。そこでたまたま柏サポーターの試合前のミーティングの場面に遭遇することとなった。
気合いを入れるために?殴られて血を流す、という演出をユーモアあるものに変えて笑いを取って結束を促し、新しいコールをお披露目してテンションを上げる彼らだったが、その中で印象に残る言葉があった。それは「今年は大変な一年になるけど、応援しよう」というようなものだった。
J2に降格した柏というクラブに対し、サポーターはどういったスタンスでサポートするのかと気にはなっていたのだが、この集まりを見て、マイナスの感情からのスタートではない事がはっきりした。最終的に自壊して降格してしまったチームを批判的に見るのではなく、とにかく信じて声を出すんだ、というような結束感がそこから感じられた。
この年のちばぎんカップは、イビチャ・オシム監督率いる千葉が2-0で勝利。柏は敗れてしまう。ただ、オシム監督は試合後の会見で「今日はうちが勝ったという結果が出てよかったのは、今日の相手がやはり強いチームだったということです。柏はすごく前線からプレッシャーをかけてきて、すごくアグレッシブなサッカーをしていると思いました」と柏を褒め称えていた。実際のところ、試合は結果がどっちに転んでいてもおかしくないような内容だった。
ただ、それにしても負けは負け。それまでの経験の中からサポーターとの関係で悩んでいたという岡山一成は、千葉という相手に負けたことで漠たる不安を感じつつサポーターへの挨拶のためにゴール裏へ移動したのだという。
「0-2で千葉に負けて、レイソルのサポーターの前に行く時、感情を押し殺し、何を言われてもブーイングされても、心を閉ざしとこう」と覚悟していたという。しかしサポーターの反応は違っていた。
記者席から見ていても激励の言葉が飛んでいたのは明らかで、それは当然のごとくサポーターの目の前にまで歩き、実際に挨拶をした選手にもはっきりと伝わっていた。
「いいサッカーやったぞ、今年はずっと支えてサポートして行くからな」と、そんな励ましの言葉を受けた岡山はサポーターとの関係で凍り付いていた心を溶かし、この試合を契機にあの日立台劇場が作られて行ったのである。
昨季の日立台での戦績は素晴らしいものがあるが、あの強い舞台が作られたのは、選手や監督だけの力ではないのはいうまでもない事だろう。浦和戦が国立で開催されたとき「こんなに素晴らしいスタジアムがあるのに」と残念そうに語っていたのは石崎監督だった。
佐藤由紀彦も、岡山も、柏というチームに対し、殺伐としたサポーターとの関係を心配していたとその心境を吐露している。そんなサポーターが、チームにとって重要な戦力になった。今回、柏のホームページに掲載された岡山の文章は、その過程の一端が見えて興味深かった。
「俺達もプロであるまえに、人間やから傷つくねん」
あの底抜けに明るい岡山が、そんな事を感じていたとは、知らなかった。商品を提供する側、受け取る側。その両者とも心を持つ人間である。この両者の関係が幸せな、もしくは幸せになれるクラブは、やっぱり強い。ごく当たり前の事ではあるが、岡山の文章を読んで、改めてそう思った次第である。
- by 江藤高志
- at 2008年01月23日 11:49
- in コラム
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