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2008年04月19日

筑波大学蹴球部監督・風間八宏氏「普通のサッカーをやりたい、俺なりのね」

「ボールを蹴っただけしかうまくならない。本当にうまくなりたい奴しかうまくならない。本当にサッカーうまくなりたいのか。サッカーをなめるなよ」。
声の主は筑波大学蹴球部監督風間八宏氏。
17日の水戸との練習試合に0対3で敗れた後、厳しい言葉が選手たちの胸を貫いた。

今、風間八宏氏は筑波大学にいる。
S級ライセンスを持ち、Jリーグクラブから監督要請のオファーもあるという。そんな風間氏がなぜ大学の監督という道を選び、しかも無報酬の筑波大学の監督を引き受けたのか。そして、そこの指導で何を訴えていくのか。
その胸のうちを聞いてみた。

「別にやりたくてやっているわけではないし、大学に興味があるわけではないですよ」。
風間氏は苦笑しながら、本心を語った。
だが、それでも筑波大学の監督に就任したのは「関係者の人たちが(サッカー部を)見てくれと言ってくれた。それはうれしいことだと思うし、(自分の母校で)帰ってくれば昔の教授さんや仲間もいる。それでみんな応援してくれている。そいういうありがたさを感じたんですよ」。

ただ、無報酬の仕事である。17日は朝6時まで解説の仕事をしてから、水戸に駆けつけたという。それ以外でもほとんど毎日筑波大学に通う日々が続いている。
そんな情熱を注ぐのも「みんなが真剣だから」だという。
「関係者も選手たちも真剣だし、本当に頭が下がりますよ」
しかし、そこで選手たちに伝えたいものがあるのだと風間氏は熱っぽく語った。それは「100%を尽くすことを若い人に知ってほしい」という強い思いがあるからだ。
「真剣というのは今の若い人には簡単には分からないでしょう。俺たちの時代は自分で考えなかったら何も起こらなかったし、だからうまい選手もたくさんいた。でも、今の選手は与えられるから、ある程度のことはできるけど、ある程度のことしかやってないというところをすごく感じます。なので、選手たちには100%を出させてあげたい。彼らのどこが100%なのか、100%がどこにあるのかということを突き詰めてやっていく」
冒頭の言葉通り、選手たちには厳しい言葉が飛ぶ。だが、答えは与えない。それは自らが導き出すものであり、監督はその手伝いをするに過ぎないからだ。
「サッカーは自分でやるもの。選手たちはほとんど自分でやってきてない。やらせてないというか、どうしても自分を見つめることが苦手。サッカーをなめることは自分をなめること。自分で考えて戦える選手が出てきてほしいなと思います。時間はかかるかもしれないけど」

そのためには「勝ち負けはそんなに関係ない」と風間氏は話す。
実際、水戸との練習試合でも勝敗については触れていない。自分たちのやるべきことをトライしなかった、いや、練習から高い意識でやってないから試合でできないのだと説いたのであった。
「自分で考える」ということのために風間氏は練習において戦術やセットプレーの練習をしていない。
なぜなら、「1人1人が戦術。全員が戦う術をまずつけないといけない。戦術は強い個人が揃った時に完成するものだから」という考えがあるからだ。
練習はほとんどが試合形式。やることを決めずに選手たちに自由にプレーをさせる。そこでひとつひとつ注文をつけていくのが風間スタイルだ。
「プロになってもお客さんは戦術を観に来るわけではない。うまい選手がみたいわけだし、生き生きした選手を見たいわけでしょ。グラウンドでやってはいけないプレーはない。やっていけないのはボールを取られること。そのためにはどんどん失敗して、そして突き詰めていくことですよ」

現在、風間氏は筑波大学監督のほかにも日本サッカー協会の理事を務め、そして清水でのスペシャルトレーニングを開催するなど多忙な日々を送っている。
「肩書きだけじゃ食っていけないからね」と苦笑いする。
ただ、そうした活動に熱を入れるのも「世界で通用する選手を見たいから」に他ならない。
「すごい選手は作れるものではないとよく言われるけど、もしかしたらその発想が可能性を消していることはあるよね。100人に1人いたらすごいし、1万人に1人でもすごい。そういう宝物を見逃さないことが大事だと思いますし、それを各地域でやっていかないといけない。みんながそういう考えを持てるようになれば、今やっていることも日本の役に立つんじゃないかな」

戦術や結果にとらわれがちな指導者というなかにあって、一線を画する風間氏のもとからどんな選手が育っていくか楽しみである。
「とにかくボールを取られなければ何も起こらないわけですよ。俺はそれが本来の普通のサッカーだと思うよ。俺なりのね」
風間氏の情熱が筑波大学蹴球部に燦燦と降り注いでいる。

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