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2008年06月08日

相手が悪かった。

 日本代表がそうであるのと同様か、それ以上にオマーン代表にとって負けは許されない試合だった。だからこそ、彼らはあがき続けた。

 日本に住んでいる限り、中東諸国のW杯への思いはなかなか伝わってくることはない。しかし、日本がW杯への出場を熱望しているのと同様に、オマーン代表や同国のサッカーファンにとってW杯への思いは強い。そして1次予選から勝ち上がってきた彼らにとって、この日本戦が最終予選に勝ち上がるための最後のチャンスだったのである。だからこそ、彼らはこのタイミングでの監督交代に踏み切る。試合までに準備された時間は絶望的に短かったが、変えるリスクよりも変えないリスクを重視した。

 そこからの、協会を巻きこんだ連係プレーは見事の一言だった。試合前日の監督会見を巡る一連のゴタゴタ。つまり「言った、言わない」の水掛け論に日本を誘い込み、巧妙に挑発を仕掛ける。日本メディアを前に「okadaはなぜ来ないんだ?」と吼える事務局長は「FIFAにレターを書く」と発言することで、メディアを通して日本側にプレッシャーをかけようとしたのである。何もしないのであれば何かをした方がいい。状況が何も変わらなくて当たり前で、FIFAが制裁を下してくれればめっけもの。そうでなくても「そうした制裁が与えられるのではないか」と日本代表の誰か一人でも思ってくれればそれで良かったのである。

 空調の利いた高級ホテルの一室で行われたアル・アザーニ監督の会見場には、日本側の席も用意されていた。「お前らが来なかったんだろう」という言い訳を彼らは用意していた。そして会見に「来なかったもの」に対する仕打ちは、礼を欠くものだった。岡田監督が行った公式会見は、当初予定されていた試合会場脇のテントではなく、スタジアム脇の通路で行われた。オマーン側は、テントはまだ準備が終わっていないとして、使用を拒否したのである。

 そうした一連の駆け引きに対し、岡田監督は「別にそれくらいじゃ、揺さぶりじゃないかなと思います」と軽く受け流した。

「状況がそうである」と言われれば多くの日本人はそれに従う国民性を持っている。たとえばタクシーの話がある。レートの安い、流しのタクシーの値段を基準に、ホテルに常駐するタクシーと値段交渉する場合「ホテルのタクシーのレートは一定で、安くならない」と料金表を見せられれば、彼らが決めたルールに素直に従うのである。

 揺さぶりをかけて来ても、公式会見が通路で行われても「それがそうである」と言われれば「ああそうですか」と受け入れる国民性を日本人は持っている。

 オマーン協会が試みた一連の揺さぶりは、もしかしたら中東の湾岸諸国に対しては有効だったのかもしれない。「なんだあいつら」と怒らせる事に成功できたのかもしれない。しかし今回は相手が悪かった。岡田監督も、メディアも、世界でもまれに見る従順さを持つ日本人だった。

 バーレーンがホームでタイと引き分けたことで、オマーン代表は次戦のアウェイでのバーレー戦に望みをつないでいる。日本相手に失敗した挑発作戦だが、このバーレーン戦で再挑戦する価値はあると思っている。

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