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2008年07月24日
【野洲通信】プライド
「今日は絶対に勝つ」
とても静かな闘志だった。
炎天下に見舞われた万博記念公園競技場。
試合への期待が熱気に変わり、会場を包んでいた。
その中で見せた、強く揺ぎない思いは、結果となって彼らのもとに帰ってきた。

【野洲通信】では、野洲高校サッカー部にご協力いただき、チームの1年を伝えていきたいと思います。
監督とスタッフ、そして選手たちが見せる表情を追いながら、彼らの目線で、新たな高校サッカーの魅力、面白さに迫っていきます。
第8回目は、高円宮杯全日本ユース関西第3代表決定戦の様子をお伝えします。
JFA プリンスリーグ U-18関西 2008 高円宮杯出場決定戦決勝@万博記念公園競技場 晴れ
野洲高校 2‐1 大阪桐蔭
得点:松永、坂本※得点者は野洲のみです
「高円宮杯には絶対に出たい」
チームが立ち上がってから、山本佳司監督からも選手たちからも呪文のように繰り返された言葉だった。

今秋に行われる高円宮杯全日本ユース選手権に出場するためには、プリンスリーグ関西で2位以内に入るか、1部の6位以内に入り、順位決定戦で勝ち抜くか。関西に与えられた“3”の出場枠への挑戦は、とても厳しく、狭き門だった。
野洲のプリンスリーグは、連敗スタート。
ユースチームに勝つことが出来ず、どこかギクシャクしたまま総体予選に突入していた。
「何をしたらいいのか分からない」
迷い苦しんでいた選手たちから、そんな言葉が聞かれるときさえもあった5月。
それでも「県内ではやっぱり負けられない」(③西口諒/3年)と、チーム一丸となって戦っていた総体予選の6月。
一つずつ勝ち上がるたびに、選手たちにも笑顔と自信が戻りつつあった。
そして、勝負ところとなったプリンスリーグ後半戦と、順位決定戦を迎えた7月。
一つでも星を落とせば、道は閉ざされてしまう。『負けられない』という思いの中で、重い扉を開いたのは彼ら自身だった。
すでに今季3度目の対戦となった大阪桐蔭が、高円宮杯出場権をかけた戦いの最後の相手。
「大阪桐蔭はスタイルのあるチーム。そういうチームと対戦するのは難しいし、やりづらさもある。それに思っていた以上に、今日は引いてきた」(山本監督)
それを感じていたのは選手も同様。
「もっと攻めてくるかと思っていた」(①横江諒/3年)
大阪桐蔭は4バックとボランチの2人が自陣の深い位置にポジションを取り、野洲の中盤にボールが渡ると素早いチェックで挟み込み、ボールを奪取。そこからサイドを基点に速攻を仕掛け、野洲陣内に攻め入っていく。中盤でボールを失うことの多かった野洲は、自分たちのペースでパスを回せずに、チャンスをうかがいながら我慢の時間が続いていた。
さらに、野洲を苦しめたのは、この日の酷暑。照りつける太陽の下で、山本監督は「この暑さの中で選手がどれだけ集中力を切らさずに頑張れるかが大事やね」と試合前に教えてくれていた。
35度近くまで上昇した気温の中で、45分ハーフのゲーム。苦しいのは両チーム同じ。この先に待っている総体はもっと暑い炎天下の中で行わなければならない。
過酷ともいえるこの状況で山本監督が信じていたのは彼ら自身の心だった。
そして選手たち自身も、その状況を跳ね返す力を見せていた。
それが表れていたのが、まさに2つのゴール。
先制点は右サイドに開いた⑧潮入啓太(3年)のクロスに中央で⑩坂本一輝(3年)が合せたが、おしくもクロスバーに阻まれてしまう。だがこぼれた先に待っていたのは、この日左サイドに入っていた⑪松永俊吾(3年)。「なんとなくつめていた」と試合後に話していた⑪松永だが、FWやボランチと複数のポジションをこなしてきた松永だからこその判断と、落ち着き放った一撃だった。

そして、同点に追いつかれた後半13分の勝ち越し弾。⑫中川圭右(3年)の右CKを⑩坂本が頭で決めたもの。「チャンスを逃していたから、嬉しかった」と⑩坂本。激しいマークがつき、なかなか自由にさせてもらえなかった中で、エースが決めた得点に、試合後も笑顔が咲いていた。

夏前までの野洲であれば、劣勢に立った時に跳ね返せる力強さはなかったかもしれない。空回りしていることも多かったように見えた。
だがこの日は、あきらかに変わっていた。
「前線から守備をするようになって、調子も上がってきたし、落ち着いてきた」(⑦藤野友貴/3年)というように、全員で守り、全員で攻撃する“野洲の攻守”がかみ合いだしたことで、粘り強くたくましく戦えるようになっていた。
さらに「0で抑えれば、点は絶対にとってくれる」(①横江)
仲間への信頼も、彼らはしっかりと手にしつつあった。
「死闘やったね」
試合後、山本監督は安堵した表情でそっと口にした。
「この暑さでよくやった。苦しい中でトーナメントを勝てたのはチームがたくましくなるし、結果からすると高円宮杯にも一番いい行き方なのかもしれない」
試合終盤。苦しさに表情がゆがむ選手たちにかけられたベンチからの声は「頑張れ!」と「プライド!」という言葉。選手たちは、その声を聞きながら90分間走り続け、結果を残してみせた。
集中力がいつ途切れてもおかしくない厳しい状況の中で、彼らを支えたものこそ、「勝つ」という気持ちと自分たちのサッカーへの「プライド」。真夏の太陽の下で貫いたのは、野洲のこだわりでもある「ドリブルとパスの融合」(山本監督)と気持ちで負けないという強い意志。
夏は高校生の伸びしろがぐっと大きくなるときでもある。これまでも、厳しい夏を乗り越え、成長してきた選手が魅力ある野洲を作ってきた。
だからこそ、彼らが見せるサッカーが、どれだけ変っていくのかも楽しみになる。
「今日は絶対に勝つ」
その思いは青空に消えて、試合後の無邪気な笑顔に変わっていた。
そして次はいよいよ、全国の舞台が待っている。
【野洲通信】は野洲高校サッカー部公認・協力の下、取材、記事作成をしています。
こぼれ話と選手の素顔や試合の写真はこちらに掲載中です↓
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- by 青柳舞子
- at 2008年07月24日 23:07
- in 野洲通信
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