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2008年11月15日

【野洲通信】それぞれの“選手権”

「ホンマは、悔しいんやで」
練習後の全体ミーティングで、高階翔(3年)がそう口にした。
ピッチに立てない悔しさと、仲間を精一杯信じて応援する気持ちが交差する。

「選手権予選はいいイメージができひん。でもどうしても試合に出たい」
藤野友貴(3年)の声は今にも消えてしまいそうだった。
昨年、選手権予選直前に調子を崩し、レギュラーを外れた苦い記憶がよみがえる。

3年生にとっては最後の公式戦が幕を開けていた。
残された時間が少ないことを感じながら、彼らは、彼らの場所で戦っていた。

それぞれがチームの勝利のために。

今、自分ができること……。

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【野洲通信】では、野洲高校サッカー部にご協力いただき、チームの1年を伝えていきたいと思います。
監督とスタッフ、そして選手たちが見せる表情を追いながら、彼らの目線で、新たな高校サッカーの魅力、面白さに迫っていきます。
第15回目は第87回全国高校サッカー選手権大会滋賀県大会決勝直前のチームの様子をお伝えします。

いつもと同じ風景が野洲グラウンドに広がっている。
野球部員の練習の声が響く中、人工芝のピッチではサッカー部の紅白戦。
時折、山本佳司監督と岩谷篤人コーチの声がこだましている。

10月25日に開幕した(野洲はシードのため2回戦から出場)選手権予選も、残るは1試合。
翌日に決勝を控えた野洲は、緊張感を漂わせながらいつも通りにたんたんと、でも必死さと激しさも見せながら練習が行われていた。

17時を回り、グラウンドの周りにはメンバーに入れなかった部員たちがボールの行方を見つめている。視線の先は、明日、ピッチに立つことのできる仲間がいた。

これまでユニホームを手にしてきた高階は、この大会に入って応援リーダーとなっていた。

「メンバー、入れなかった」
それ以上の言葉がでないまま、静かに顔を落とした10月中旬。

それから1カ月。
準決勝の競技場で声を張り上げる彼に会った。
「応援も一生懸命練習したんやで。(坂本)一輝の先制点を見て(感動して)ちょっと泣きそうになったわ」と笑っていた。
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迎えた決勝戦前日。
公式戦の前に行われる全員ミーティングでは、選らばれた選手が一言を伝える場がある。山本監督がこの日の最後に指名したのは高階だった。
「Bチームにいる3年生には一度もユニホームを着たことがない選手がいます。Aチームに上がりたくても、上がれない選手もいる。明日の決勝に勝って、もう一度、みんなと(レギュラーを)競うチャンスをつくってほしい。
明日の試合にこめられているのは、3年生の思いです。1、2年生はその思いを感じて、一緒に応援をしましょう。
ホンマは、(試合に出られないのは)悔しいんやで。でも、全国制覇につながる第一歩だから、かっこよく、一肌脱いで頑張っていきましょう」


試合に出られなくなってからずっと、自分に何が足りないのかを考えていた。
いつも遅くまで自主練をしている姿も目にしたことがある。
悔しさも悩みもある。でもふて腐れるわけにはいかないこともわかっている。

高階はいつも「あいつらかっこいいよな。すごいよな」とAチームを見ながら話していた。
彼らのために、自分のために、今、彼ができること。

その答えのひとつが精一杯の応援だから、その声と気持ちは、きっとピッチに立つ11人にも伝わっていく。
声援は背中を押し、勇気付けるものにもなるのだから。


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10月中旬。
グラウンドのスミで、一人コーンを立ててドリブル練習をしている藤野がいた。
ケガが治りかけている途中のため、別メニューを黙々としていたのだ。

このときは潮入啓太(3年)もケガをして、練習さえできない状態だった。
チームの攻撃の核を担っている2人の離脱をよそに、ピッチでは2年生たちが躍動していた。

「正直、めっちゃ焦る。今が大事なときなのはわかってるんやけど……」
藤野はその言葉を出しながら、激しく攻防を繰り広げる選手たちに目をやった。

「去年の今頃は、ほんまにコンディションもあかんくて選手権予選に出られんかったやろ。だから、今年も出られないんじゃないかって不安になる。だけど最後やし、どうしても選手権予選には出たい」

焦りが不安を呼んでいた。
以前、藤野自身が自分のことを「落ち込むと、すごく落ちてしまう」と話してくれたことがあった。
その言葉が頭をよぎる。
また、戻れるのか。

2週間後。
選手権予選のピッチには藤野の姿があった。
きっと苦しさから逃げずに戦い、自分を奮い立たせていたはずだ。

自分の弱さに勝ち、試合に出るために、チームの勝利のために何が必要か。大事なのか。

「ヘタレてる場合じゃない。ホンマに最後やし、もう大丈夫。頑張るで」
やさしい笑顔の奥に強い気持ちを放ちながら、背番号7がゴールにめがけて進んでいく。
これまで以上に加速するドリブルのスピードが、ピッチに立てるうれしさに変わり、彼の出した答えのような気がした。

ピッチに立って戦う者と、ピッチに立てなくても戦う者。
選手権が描く彼らの夢の形が、ここで途切れないように。

「(選手権本大会決勝まで)あと公式戦はたった7試合しかないんやで! これだけ同じ時間を共有してきたんやから、全員が“野洲”としてプライドを持って、戦ってほしい」
山本監督の思いの上に積み重なる、それぞれの思い。

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野洲には野洲にしかない選手権の戦いを。

11月15日。
野洲は4連覇と4冠(新人戦、総体、高円宮杯決定戦、選手権県予選)をかけ、綾羽と対戦する。

【野洲通信】は野洲高校サッカー部公認・協力の下、取材、記事作成をしています。

こぼれ話と選手の素顔や試合の写真はこちらに掲載中です↓

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