Main Contents
2009年01月17日
【野洲通信】 最終回 “心”
2008年1月2日。
涙にくれたロッカールームから最後に出てきた③西口諒(3年
)の一言から、野洲の新しいシーズンが始まった。
「もうこんな思いは2度としたくない」
東福岡に0-1と敗れたあの日から、ちょうど1年。
2009年1月2日は、彼らが高校サッカーを卒業した日になった。
【野洲通信】では、野洲高校サッカー部にご協力いただき、監督とスタッフ、そして選手たちが見せる表情を追いながら、チームの1年を伝えてきました。広島皆実の優勝で幕を閉じた選手権で、2008年度、野洲の戦いは終了しました。野洲通信、最終回は第87回全国高校サッカー選手権大会2回戦後の様子をお伝えします。
彼らにあてられた、一通の手紙には“想い”があふれていた。
志半ばでチームを離れる悔しさと、宙に浮いた選手たちへの気持ち。
「情けない監督でごめんなさい」
その言葉から始まる山本佳司監督の心に、この“87回選手権”を思う。
2008年12月30日に開幕した全国高校サッカー選手権大会。
野洲は初戦の岐阜工業に辛勝し、2009年を迎えていた。
「まずはこのチームで年越しが目標!」(⑧潮入啓太/3年)と言っていた選手たちも安堵の表情。
しかし、元日の練習では張り詰めた緊張感の中にあった。
「5日(ベスト8)まで勝ち上がることができたら、アイツらはきっとやってくれる。だからこそ、初戦と2回戦は本当に山場になる」(山本監督)
引き締まった練習に、いつもの明るさはなく、翌日に備えようとしていた選手たち。
その横で山本監督の表情は険しいまま。
「明日の試合は大丈夫やと思うけど、体調がよくない」
消え入りそうな声に不安がよぎる。
そして翌日。ベンチに山本監督は座ることができないまま、試合が始まった。
まったくと言っていいほど空回りした立ち上がり。動揺はなかったと話す選手たちだが、ぎこちなさは否めなかった。
「(野洲が)引いてくるとは思わなかった。先制点も含めて“イケル”かなと感じた」と鹿島学園の鈴木監雅人監督。
「鹿島学園はセットプレーが強い。そこは気をつけないといけない」(①横江諒/3年)
開始直後の失点は、その言葉通りにCKから。
鹿島学園の勢いは増す中、奪い返した⑩坂本一輝(3年)の同点弾。
「チームに貢献できるプレーをする」
1試合1得点と、この1年の目標を掲げていた坂本が大会前に強く言い切った、全国への思い。
「1試合1得点なんて子どもっぽいことを言うのは、もう終わりにする。今はチームのために得点を取りたい」(坂本)
さらに後半。
「調子が上がらなくて、試合に出られるか分からない……。でも最後やし、みんなと戦いたい」と不安をのぞかせていた⑦藤野友貴(3年)が右サイドを駆け抜けた逆転ゴール。
「あの(藤野)友貴(⑦/3年)のゴールで絶対にイケルって思った」とスタンドで見ていた3年生が口にするほど、大きな1点は、チームに勢いと活気をもたらすはずだった。
だが、その直後にPKを与えて同点。さらに試合終了直前に勝ち越され2-3で終了の笛が鳴った。
「ごめんなさい」
涙を止めることなく話す精一杯の言葉はたった一言。
期待に応えたかった。
もう少しこのチームで試合がしたかった。
山本監督をベンチに戻させてあげたかった。
何より、
全国で一番高いところに立ちたかった。
選手権本大会を控えた12月中旬。3年生たちに、この1年を振り返ってもらったことがある。
「いつも自分のことばかりで、チームのことは見えんかった。でももう最後やし、(決勝戦の)12日まで、このチームでサッカーをしたいって、そう思う」
異口同音に帰ってくる言葉は、18歳の本心。
そんな選手たちを見てきた山本監督は言う。
「彼らには大会に勝ち続けることでチームが一つになることや、熱くなるということを知ってもらいたい。一人の“男”になって、高校サッカーから卒業していってほしい」
思いを胸に2年の月日をかけて作り上げてきたチームの最後の大会。
決して言葉にせずに、ピッチで伝えてきた心が形になろうとしている瞬間に、その場所にいることのできない指揮官の胸の内。
「申し訳ない気持ちでいっぱいやったし、本当に悔しかった。あと1週間でいいから時間がずれてくれたら……。ベンチに座って感じる臨場感っていうのかな。声とかボールを蹴る音とか汗も涙は、あの場所でしか感じられないものなんだって分かった」
2008年度
滋賀県新人戦優勝
プリンスリーグ関西5位。高円宮杯出場決定戦進出。
全国高校総体1回戦敗退
高円宮杯全日本ユース選手権ベスト16。
第87回全国高校サッカー選手権大会ベスト32。
「全国優勝を超えたいっていう気持ちは、僕たちにもあった。それを決めるのは見てくれる人たちだけど、野洲サッカーの楽しさを感じてくれたら嬉しい」(潮入)
選手たちの手によって彩られる野洲の魅力は、彼らによって、また広がっていく。きっと選手権はその始まりの第一歩。
悔いは残る。
でも、明日は来る。
山本監督の挑戦が始まったばかりであるように。
1、2年生は、また日本一高い場所を目指して。
3年生は、それぞれの新しいステージで。
野洲が野洲であり続けるために、戦わなければならない場所が待っている。
- by 青柳舞子
- at 2009年01月17日 19:42
- in 野洲通信
TrackBacks
トラックバックURL:
Comments
Post a comment
(フットボール定食 では不適切なコメントを防止するため、コメントを掲載する前に管理者がコメントの内容を確認しています。コメントを初めて投稿する場合すぐに掲載されませんが、管理者が適切なコメントと判断した場合コメントは直ちに表示されますので、再度コメントを投稿する必要はありません。)
一年間取材お疲れ様でした。
野洲は気になるチームなので、こうやって定期的に記事にしてもらえて、ファンとしてもとても嬉しかったです。
とくに、試合の結果だけでなく、ベンチでの裏側も少し垣間見れて新鮮でした。
これからも野洲に限らず、幅広く色々な記事をお願いします。期待しております。