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徳島の練習を見ていて、一際目立つ赤いスパイクを履いている選手がいた。
彼の名は本間康貴。
今季、徳島ヴォルティス・アマチュアからトップに昇格してきた24歳のGKである。
「いいスパイクだね」と声をかけると、本間はニヤリと照れ笑いを浮かべた。
彼のスパイクが目立っていたのは決して派手な色だからではない。熱い熱い思いがその赤さを、より一層まばゆいものにしているのであった。
それは約束のスパイクだ。
「昨年の夏頃にサポーターの人が、僕がトップに上がろうと上がらなくても、来年も徳島でプレーするならスパイクをプレゼントしますって約束してくれたんです。それで今年トップへの昇格が決まり、徳島でプレーをすることとなったら、スパイクを本当にくれたんですよ」
そのサポーターというのは、なんと小学5年生の男の子だという。
「お母さんと一緒にアマチュアの試合を見に来てくれる男の子で。このスパイクはすごく高かったと思うんですよ。でも、小遣いを貯めて買ってくれたんだと思います。プロとなってはじめて履いたスパイク。履いているだけで、気持ちが伝わってくるんですよね」
昨年12月、松本市で行われた地域リーグ決勝大会にヴォルティス・アマチュアは出場したが、残念ながら一次リーグ敗退。試合後、帰路についた選手たち。松本市からの長旅を終え、徳島のクラブハウスに着いたのは夜12時を回っていた。しかし、その男の子は選手たちをクラブハウスまで出迎えに来ていたのだという。
そんなエピソードを話した後、本間は派手な色のスパイクをあらためて見つめ直し、一言一言ゆっくりと言葉を吐いた。
「早くこのスパイクを履いて試合に出たいですね。それが彼への一番の恩返しになると思います」
本間が試合に出たいと強く思うのは、それだけではない。
「選手の気持ちも、サポーターの気持ちも僕は分かるんですよ」
昨年、アマチュアに所属していた本間はトップのホームゲームの時には設営の手伝いをすることもあったという。
それが終わると本間は黄色いGKユニフォームに着替え、すぐさまゴール裏に行き、チームフラッグを振りながら応援をしていたのだ。
「人一倍グラウンドに立つということに憧れを持っていると思います。何とか徳島を盛り上げたいんですよね。徳島という土地に明るい話題を与えることが僕らの使命だと思っています。そのためには早くピッチに立って活躍しないといけないと思います」
サッカーに対して、そして徳島という土地に対して、純粋で無垢な思いで包まれているGK本間康貴
「ようやくプロとしてスタートラインに立ったばかり。プロは努力するのは当たり前。まだ一番下の立場なので、日々精進してチャレンジしていかないと試合には出られない。このスパイクを履いて試合に出るためにも本当に死ぬ気でやっていかないといけないと思っています」
様々な思いを背負って守るゴールマウスを破ることは容易ではなさそうだ。